投資物件を選ぶときは、とりあえず利回りが高い物件を選んでおけばいいのでしょうか?
そもそも利回りとは?
「利回り」は、購入する投資物件を選ぶときの判断材料の一つになります。
まずは利回りの意味からおさらいしましょう。
利回り=投資金額に対する収益の割合
利回りは、投資金額に対する1年あたりの収益回収の割合のことを言います。
たとえば購入金額5,000万円の物件から年間250万円の収益を得られるケースだと、利回りは250万円÷5,000万円=5%ということになります。
「利回りが高いほどより収入が多く得られる」ということが分かるので、投資物件を選ぶときのひとつの指標として用いられています。
投資金額5,000万円のマンションを購入 | |
年間収入 | 利回り |
250万円 | 5% |
350万円 | 7% |
400万円 | 8% |
500万円 | 10% |
利回りは地域や物件種別によって大きく異なりますが、相場としては利回り3~5%前後の物件が多く見られます。
利回りには表面利回りと実質利回りというものがある。
利回りにも「表面利回り」と「実質利回り」という2つの考え方があります。
不動産投資家なら両者の意味を確実に理解しておかなければなりません。
表面利回り・実質利回りの計算例
マンションA物件(年間想定収入:250万円) | |||
取得時の費用 | 継続的な費用 | ||
購入代金 | 5,000万円 | 物件管理費 | 40万円 |
購入諸経費 | 250万円 | 固定資産税等 | 10万円 |
上記の例をもとに表面利回りと実質利回りを計算します。
まずは表面利回り。
表面利回りを計算する上では諸経費・ランニングコストを考慮しませんので、単純に年間収益を購入価格で割って計算します。
(250万円)÷(5,000万円)=5.0%
一方で実質利回りを計算する上では諸経費やランニングコストを組み込んだ実質的な利益の割合を算出しますので、次のように計算します。
(250万円-50万円)÷(5,000万円+250万円)=3.8%
Aマンションでは、表面利回りが5.0%あるのに実質利回りは3.8%という計算になりました。
収益性を示す「利回り」をみるときは、実際の手取り収入(純利益)をベースにした実質利回りを確認するようにしましょう。
利回りだけを見て判断することのリスク
表面利回りよりも実質利回りの方が重要だということはわかったと思います。
ただし「実質利回がよければいい」と考えるのも早計です。
やはり利回りだけを見て購入物件を決めるのはリスクがありますので、その理由について解説していきます。
リスク①:想定していた利回りが常に実現するとは限らない
通常、投資物件として売りに出ている不動産情報には利回りが記載されています。
ここに表示されている利回りは、今現時点での収益性を示す数字であるということに気を付けなければなりません。
つまり、物件概要に表示されている利回り=今まで通り順調に賃貸が稼働することを想定した理想値ということです。
もしも運用中に入退去が発生し、1年のうち50%の期間しか家賃収入がない状況となってしまった場合はどうなるでしょうか?
その年の年間収入は125万円となり、実行の利回りを大きく低下させてしまいます。
不動産投資に付き物の稼働率低下のリスクは、利回りという数字に反映されていないのです。
リスク②:予想外の経費がかかり、想定利回りが実現できないことがある
不動産投資のリスクは入居稼働率だけではありません。
建物オーナーとして、経年劣化や老朽化などによる不具合が発生したときは適切に修繕しなければならないということも考える必要があります。
よくあるトラブルとしては「水道管からの水漏れ」「建物内での雨漏り」などがあります。
このような建物の不具合は入居者の生活の支障となりますので、建物オーナーは速やかに修繕を行う義務を負います。
修繕にかかる費用は、実質利回りを低下させる要因となります。
このような突発的に発生する修繕リスクも、利回りから読み取ることはできません。
リスク③:将来、売却がしづらい可能性がある
利回りが高い物件=物件そのものの価値が低い(価格が安い)ということです。
不動産の利回りが高すぎる物件は「築年数が古い」「需要の低いエリア」など何らかの理由で物件価格が安いことが考えられます。
このような物件は将来、売却したいタイミングで思うように売却ができないという問題が発生する可能性が考えられます。
不動産投資を行う上では、いざとなったらすぐに売却ができるかどうか(換金性の高さ)ということは非常に大切です。
利回りだけに捉われてしまうと物件そのものの資産価値の分析がおろそかになってしまいがちなので注意が必要です。
利回りの高さとリスクの大きさは比例する
お気づきかと思いますが、投資物件には「利回りの高さとリスクの大きさは比例している」という傾向があります。
さきほど利回りは「収益÷投資金額」という数式から導き出されるという話をしました。
利回りが高い=次の要素が考えられます。
②家賃収入が相場よりも高い
ここで考えるべきことは、利回りが高い理由として①か②のどちらの要素が大きいかということです。
たとえば築古物件は価格が安いので、必然的に利回りが高くなります。
しかし、築年数が古い物件ほど経年劣化や老朽化などによる修繕のリスクが大きくなるということは想像できると思います。
そのうえ築古の建物は賃貸物件としての人気も比較的少ないので、空室発生も起きやすいことが考えられます。
一方で築浅物件や人気エリアに属する不動産は、価格が高いため利回りが低くなる傾向があります。
利回りが低い反面、経年劣化や老朽化の心配は少ないですし、稼働率を保ちやすいというメリットがあります。
つまり、利回りが高い物件ほど、何らかのリスクが潜んでいる可能性が高くなるということになります。
利回り | 特徴 | |
築古物件 | 高い | 修繕・空室発生リスクがある |
築浅物件や人気エリア物件 | 低い | 稼働率を保ちやすい |
高利回り物件を購入するときは物件のリスクを把握し、適切にリスクヘッジがとれるように対策を練っていく必要があるのです。
利回りは、期待値でしかないということに注意
賃貸運用中に想定外の事態が発生すると、利回りに大きく影響してしまいます。
購入時に確認する利回りはあくまで「期待値」だということを念頭におく必要があります。
同時に、投資用不動産を購入するときは物件が固有に持っているリスクの度合いを見抜くことも重要になるのです。
利回りとあわせて重視するべきポイントは?
投資物件を選ぶときは、利回りも含めて総合的な観点から良し悪しを見極めていく必要があります。
利回りとあわせて特に重要視するべきポイントを紹介します。
重要ポイント①:物件の売れやすさ
不動産投資から得られる収益には、インカムゲイン(賃貸益)とキャピタルゲイン(売却益)の2つがあります。
賃貸運用している間はインカムゲインが継続的に入ってきますが、最終的には売却したときのキャピタルゲインをもって全ての利益が確定することとなります。
いざというときに現金化しやすいというのは不動産投資を行う上では強みになります。
・住みやすさ→近隣施設などを確認
・売買取引の活発さ→取引事例などを確認
重要ポイント②:稼働率(入居率)の実績
物件情報に表示されている利回りは、基本的には満室時を想定した数値です。つまり満室状態が保てないのであれば利回りは机上の数字となってしまいます。
利回りと合わせて確認しておきたいのが、実際の稼働率(入居率)がどうなっているかです。
購入する物件がマンションであれば、建物の入居率を確認しましょう。空室数が目立つようであれば、物件を購入してもフル稼働で収入が得られない可能性が高いということになります。
不動産業者を通して前オーナーの稼働率(入居率)の実績が確認できるのであれば、参考にしましょう。
また、もっと広い目線でいうと、半径数百メートルの近隣エリアの同等物件で空室が目立っていないかということも確認しておきたいところです。
重要ポイント③:どれくらい支出がかかるのか
収入面だけでなく、「どれだけお金がかかるのか」ということにも着目する必要があります。
ランニングコストの面でいうと、マンションの管理費・修繕積立金などといった固定費は確実にチェックする必要があります。
管理費・修繕積立金は管理組合によって金額は大きく変わります。極端に高いランニングコストになっていないかということを、実質利回りの計算に落とし込みながら確認しましょう。
また、築古建物だと突発的な修繕工事が必要になることがあります。
物件の現況を把握しつつ、不具合が発生してもすぐに対応できるよう資金計画を立てておくことが重要です。
まとめ:利回りは重要な要素だけど、それだけに捉われるのは危険!
利回りは投資金額の回収率を表す重要な指標のひとつです。
しかし、利回りが高い物件にはそれほどの理由があり、リスクがが高くなる傾向があるということが分かったと思います。
不動産投資の成功率は物件選定の時点でほぼ決まります。
物件を選ぶ上では利回りだけに捉われず、いろんな要素を加味して総合的に良し悪しを判断するようにしましょう。
不動産投資の成功率は知識量に比例します。いきなり物件を購入するのではなく、まずは必要な情報を集めましょう。
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