分筆前に土地の一部を売買することは可能?手順と注意点について

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真地 リョウ太  Twitter
1989年生まれ。2012年から不動産会社で売買実務を担当。不動産相続対策の案件も実績あり。本サイトでは業務経験から得たスキルをみなさんに発信できればと思っています。宅地建物取引士・行政書士試験合格・FP2級。好きな食べ物は梨。

 

土地の一部を売買したいとき、分筆が完了していない状態で先に売買契約をすることは可能でしょうか。

 

また、気をつけなければならないポイントはあるのでしょうか。

土地全体の中から一部だけ区割して売買するというケースにおいて、未分筆の状態で先行して契約を交わすということは可能で、実務的にも行われています。

 

ただし、一時的に1つの土地の中に複数の土地が存在していることになります。

 

トラブルにならないよう注意しながら、契約手続きと分筆登記を並行して進めていく必要があります。

 

土地の一部だけを売買するときにはどのようなことに気を付けるべきなのか考えてみましょう。

 

分筆前に売買契約を行うケースはどんなとき?

たとえば300㎡の土地を所有していて、そのうち150㎡を区割りして売却するというケースがあったとします。

本来であれば先に分筆登記を行って、筆界が確定してから売買契約を結ぶ方がトラブルになる可能性が低いです。

しかし分筆登記を行うためには、現地での測量作業や隣地立ち合い、法務局での登記手続きなどの手順が必要となり、短くても1ヶ月ほどの日数がかかることがほとんどです。

 

 

分筆に必要な手続き期間中、当事者に権利義務の関係がない不安定な状態だと、どちらかの気が変わったりすると売買契約自体が空中分解してしまうおそれがあります。

分筆前に先行して売買契約を結んでおくことでお互いに契約の拘束力が生まれるというメリットがあるのです。

 

未分筆の土地を売買する手順

未分筆の土地の売買はどちらかというとイレギュラーな契約で、決められた契約のテンプレートがあるわけではありません。

あとあとトラブルにならないよう気を付けて契約内容を検討する必要があります。

下の図のように3筆の土地の一部の取引を行うというケースで、手続き方法について考えてみましょう。

3筆の土地の一部の取引を行うというケース

 

契約書の地番の欄には「〇〇の一部」と記載

売買契約書には土地を特定する情報として地番を記入する項目があります。

未分筆の土地にあたっては分筆後の地番が確定していないので、「〇〇番の一部」と記載することで全体の中の一部であることが明確になります。

たとえば上の図のケースで売買をするときは、「(1)100番1の一部、(2)100番2の一部、(3)100番3」というように、所在となっている土地ごとの項目に分けて記載します。

 

所在となっている土地ごとの項目に分けて記載

 

面積の欄には、全体面積および売買予定面積を記載

契約書等には土地の面積を記入する項目がありますが、未分筆の土地を売買する場合、全体面積とその内売買対象予定面積を記入するようにしましょう。

上のケースにおいては、「(1)100㎡(内売買対象面積50㎡)、(2)100㎡(内売買対象面積50㎡)、(3)50㎡」と記載します。

なお、持分割合の項目には「全部」と記載します。

全体の土地の一部を分筆するので「一部」と書いてしまいそうですが、あくまで分筆が完了していないだけで最終的には分筆後の区画の全部を所有するということに気を付けましょう。

売買契約書の書き方【土地の面積】

 

分筆予定図(概略図)を添付する

分筆する予定のラインを公図と重ねた分筆予定図(概略図)を添付

 

売買契約書・重要事項説明書には登記簿謄本や公図などの関連書類を添付することになっていますが、分筆が完了していない場合はこれから分筆する予定のラインを公図と重ねた分筆予定図(概略図)を添付します。

可能であれば測量士などの専門家が現地で測量した境界点を基準に作製した分筆予定図面が望ましいですが、契約時点で測量を行っていない場合は概算図面の添付でも問題ありません。

現地に擁壁などの工作物がある場合は、分筆の方法(たとえば。擁壁面を境界線とするなど)について具体的に協議しておくようにしましょう。

売買契約は、実測売買(清算あり)の形態で締結する

不動産の売買契約書

 

土地の売買方式には公簿売買実測売買という2種類の形式があります。

 

公簿売買 公簿(登記簿)に記載されている面積を契約面積とする方式。原則として、実測面積との誤差があってもお互いに異議の申し立てができない。
実測売買 実際の面積(実測面積)が契約面積となる。 実測清算あり 誤差があった場合、誤差の面積に応じて売買代金の増減を行う
(事前に実測清算の平米単価も決めておく必要がある)
実測清算なし 誤差があっても売買代金の増減は行わない

 

今回のように土地の境界や面積が確定していない状態で売買契約を結ぶときは、面積誤差によるトラブルを防止するためにも実測売買の形式で契約を結ぶことが望ましいです。

また、実測売買で契約を交わすときは実測清算の有無をあらかじめ決めておかなければなりません。

面積の誤差が大きくなったときのトラブルを回避することを考えると実測清算を行うことを前提とした契約にしておくことが望ましいでしょう。

 

 

売買契約締結後に分筆登記を実施

土地家屋調査士が現地で測量を行い、分筆用図面を作成

売買契約の締結が完了したら、速やかに分筆測量・登記の手続きに進めます。

分筆登記申請の資格者である土地家屋調査士が現地で測量を行い、分筆用図面を作成することになります。

測量作業時には現地に境界標(プレートなど)が設置されるので、想定していた分筆ラインと相違がないかということを登記申請前に必ず現地で確認しなければなりません。

なお、分筆登記の測量図面を作成するにあたっては土地家屋調査士による隣地所有者との立ち合いが必要です。

分筆対象土地と接している隣接地(隣地所有者)が多いほど測量作業日数がかかるということも考慮しておきましょう。

実測清算確認書面を交わす

実測清算を行う場合、分筆登記完了後に実測清算確認書の締結を行います。

分筆測量によって確定した面積に対してあらかじめ決めておいた実測清算の平米単価を掛けた金額が売買代金の増減額となります。

たとえば実測清算平米単価が50,000円で、契約面積よりも5㎡大きくなったということであれば、売買代金から25,000円増額というように新たに合意します。

実測清算確認書には少なくとも下記の項目を記載しておく必要があります。

実測清算確認書(例)
売主および買主は、令和□年□月□日付けに締結した不動産売買契約書に関し、下記の事項を確認した。
(1)現契約の契約面積
(2)分筆測量によって確定した面積
(3)1と2の面積の差異
(4)実測清算の平米単価
(5)売買代金の増減額
(6)確認書の締結日
(7)当事者の署名・捺印
実測精算確認書のサンプル

 

まとめ:分筆前の土地の売買契約

土地の一部を売買するというとき、本来でしたら先に分筆して綺麗に整えた状態で取引を行うのがベストです。

しかし、急いで契約書を交わさなければならないなど特段の事情で契約が先行するというケースが少なくないのも事実です。

イレギュラーな契約になるので、トラブルにならないよう細心の注意をしながら進める必要があります。

未分筆の土地を売買するときの注意点
・売買対象のライン(所有権界)がきちんと確定していれば、未分筆でも取引可能
・面積の誤差が生じることを前提に契約の体裁を整えること
・誤差によってトラブルに発展しないよう、実測売買(清算有)で契約すること
・売主・買主で認識の違いが生まれないよう、契約書の記載方法に十分注意すること
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