分譲マンションの「管理者方式」のメリット~理事会方式と何が違う?~

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マジメに不動産

真地 リョウ太  Twitter
1989年生まれ。2012年から不動産会社で売買実務を担当。不動産相続対策の案件も実績あり。本サイトでは業務経験から得たスキルをみなさんに発信できればと思っています。宅地建物取引士・行政書士試験合格・FP2級。好きな食べ物は梨。

 

マンションの管理組合の理事(役員)って必須なんですか?
なんか大変そうなので選任されたくないのですが。。。

分譲マンションでは「理事になりたくない!」という意見は意外と多いです。

 

仕方なく理事を引き受けたものの、なかなか参加ができずに幽霊理事となってしまう人も少なくありません。

 

もしも入居者の大半が組合運営に消極的なタイプなら、組合運営がうまく進まなくなってしまうおそれがあります。

 

このような声が多い中、管理組合の外に管理者を委託する「管理者方式」というしくみを採用するマンションが増えています。

 

従来の「理事会方式」と何が違うのでしょうか。それぞれの内容を比較してみましょう。

 

 

「理事会方式」

区分所有のマンションでは、管理組合員(所有者)の中から一定数の役員が選定されるのが一般的です。

選ばれた役員は、マンションが適切に維持されるためにそれぞれがあらかじめ決められた役割の仕事を行う必要があります。

役員を中心にマンションの維持管理業務が行われるしくみを「理事会方式」といいます。

マンション役員の職位と役割

理事長 理事の代表として規約で定められた業務を執行する。
副理事長 理事長の補佐
理事 理事会への参加。規約で定められた業務を行う(総務、広報、営繕など)
会計理事 管理費の管理および会計業務
監事 管理組合の財産が適切に運営されているかをチェックする

 

理事会では何をしている?

管理組合員から選ばれた役員は、定期的に「理事会」を開催します。

理事会に主席した理事たちは下記の事項に対して審議を行い、多数決によって採用・不採用を決議します。

理事会で決められること

・収支予算、事業報告の案
・管理規約や建物内ルールの案
・長期修繕計画の案
・その他、総会での議案書
・組合員の室内リフォームの承認について
・その他、規約で定められている事項

 

理事会では何でも決められるわけではありません。マンションの全住民にとって特に重要な事項については総会(組合員全員参加)で決議をとる必要があります。

 

理事会で決められないこと

・理事(役員)の専任、解任
・管理規約の変更
・大規模修繕などの変更行為
・委託先の選定、変更など
・その他、規約で定められていないこと
※総会の議案は、理事会で決められる
理事会の裁量
収支予算案、事業報告案
管理規約案、建物内ルール案
長期修繕計画の案
総会での議案書
組合員の室内リフォームの承認
理事(役員)の専任、解任 ×
管理規約の変更 ×
大規模修繕などの変更行為 ×
委託先の選定、変更など ×

 

理事会方式の目的

理事に選ばれた人たちは、定期的に業務をこなしていかなければなりません。

マンション入居者の人たちが快適に生活するためとは言え、何故このような煩雑な方式をとるのが一般的となっているのでしょうか。

理事会には大きく「区分所有者全員の意思をとりまとめて管理に反映する」という目的があります。

もしも区分所有者の中に恣意的な行為をしようとする者がいれば、他の人の権利が侵害されるおそれがあります。

全員が公平に意思決定に参加できるよう、総会で選ばれた理事たちが互いに監視しあいながら全区分所有者に代わって事務を行うという方法が一般的となっているのです。

 

 

「理事の業務が面倒」と言う声が増えた

しかし、分譲マンションの理事業務に積極的に参加するのは面倒くさいという人は意外に多いものです。

中には「理事に選任されるのが嫌だ」という理由で分譲マンションの購入を懸念する人もいます。

分譲マンションの管理に積極的に参加したくない、もしくは参加するのが難しいという声が増えた理由として考えられる背景には、以下の事情があると言われています。

・マンション所有者の高齢化が進行
・セカンドハウス(別荘)としてマンションを購入する人が増加
・投資目的でマンションを所有する層が増加
・そもそも管理運営に無関心な人が多い

 

標準管理規約の改正

そのようなマンション管理の実態を踏まえた上で、国土交通省作成のもと一般的に用いられている「標準管理規約」の内容が改正されました。

これまでの標準管理規約では、区分所有者の中から専任された理事(役員)による理事会を中心にマンションの管理が行われることを前提とした書面内容でした。

改正後は、必要に応じて組合員以外の者から理事を選任できるという趣旨の文言が追記されました。

 

 

「管理者方式」という管理方法

理事会を設けずに組合運営を行う方法として普及しているのが「管理者方式」というものです。

「マンション管理士」という専門の資格を保有している法人(管理専門会社)に管理者となってもらうことで、理事を置かなくても円滑に組合運営ができるようになります。

建物の区分所有等に関する法律

第三条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。

出典:建物の区分所有等に関する法律 | e-GOV法令検

 

管理者ができること

管理者に就任した者は、マンション管理組合が適切に運営されるために主に以下の業務権限をもっています。

■保存行為
マンションを維持するために必要不可欠な行為

■集会決議の実行
総会などで決まったことを実行すること

■管理規約で定められた事項
管理規約においてあらかじめ管理者の権限を決めておくことも可能

■第三者に対する権利行使
損害賠償請求や保険金請求など。また、訴訟時には組合に代わって原告(または被告)となることも可能。

 

 

管理者方式のメリット

マンション管理組合に管理者を置くことで区分所有者が理事として定期的に理事会を開催するという必要がなくなりますので、入居者の負担が軽減されるというメリットがあります。

また、マンション管理士は多くの分譲マンション管理の実績を持っていますので、イレギュラーな案件が発生した場合においても過去事例などからいち早い解決策を導き出すことができます。

また、プロ目線で建物の管理を行ってもらうことで共用サービスのクオリティが高くなることもあります。

 

管理者方式のメリット

・区分所有者の負担軽減
・異例な事案が発生しても解決しやすい
・プロに管理業務を任せられるのでクオリティが高い
・プロ目線で運営収支を立てることでコスト削減につながることも

 

管理者方式のデメリット

理事会を置かないことによるデメリットとしては、区分所有者から管理者へのチェックがしにくくなることで不正が起こりやすくなるということがあげられます。

 

また、管理会社の業務が増えることでランニングコスト(管理費)が高くなってしまうということも考えられます。

管理者がいる場合でも、区分所有者は定時総会で年度予算・決算を確認し、承認することができます。

管理者がきちんと仕事をしているか気になる方は、どのような運営が行われ、どのような支出をしているのかという点に着目して総会に参加するようにしましょう。

「理事会方式」から「管理者方式」へ変えられるの?

管理方式の変更(管理者の専任)は、総会の決議事項です。

今現在、理事会方式をとっているマンション管理組合においては、理事会で「管理方式の変更案」について議案を決めたのち、総会において過半数の同意を得る必要があります。

マンションも多様性の時代

これまでのマンション管理組合には、マンションを良くするために住民のみんなでコミュニケーションを図りながら運営していくという風潮があったように思います。

そのような雰囲気も大切なことではあります。

しかし「ただ快適に生活できればいい」という人や、仕事が忙しくて組合どころではないという人、投資目的で所有している人など、いろんな人がマンションを所有しており、一人一人の立場を尊重することも重要です。

このような時の流れが管理者方式を選ぶマンションが増えている要因の一つではないでしょうか。

これからマンションを購入する予定の方は、ぜひ管理方式という点に着目してみてください。

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