住宅を買うなら長期優良住宅がいい?メリット・デメリットを徹底比較

長期優良住宅のデメリットとは? マイホーム購入
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マジメに不動産

真地 リョウ太  Twitter
1989年生まれ。2012年から不動産会社で売買実務を担当。不動産相続対策の案件も実績あり。本サイトでは業務経験から得たスキルをみなさんに発信できればと思っています。宅地建物取引士・行政書士試験合格・FP2級。好きな食べ物は梨。

 

長期優良住宅を取得するメリットってなんですか?

税制、住宅ローンなどの面でメリットがありますが
一番のメリットは「資産価値が落ちづらい」という点ではないでしょうか。

最近、長期優良住宅という言葉をよく耳にするようになりました。
一体どんな家が長期優良住宅なのか、皆様はご存じでしょうか?

「長期優良=長く住める高品質な家」と、なんとなく言葉からイメージはできますが、実際どんなメリットがあるのかなど詳しく理解している人は意外と多くありません。

そこで本記事では長期優良住宅という制度の概要を紹介します。

この記事のポイント
・長期優良住宅がどういうものなのかが理解できる
・メリット、デメリットが把握できる。

 

「長期優良住宅制度」ができた背景

日本人は昔から築浅の建物を好む傾向があると言われています。

それを裏付けるように、建物を建築しては解体してあたらしく建て替えるというスクラップアンドビルドが大昔から繰り返されてきました。

しかし建物は本来、いいものをつくり、きちんとメンテナンスすることでもっと長く使うことができます。

それなのに短期間で解体・建て替えを繰り返すのは経済的にも環境的にも良くないという考え方が時代とともに広がり、「長期的に住める優良な建物をつくる」ことの大切さが謳われるようになりました。

そのような背景から制定されたのが長期優良住宅の普及の促進に関する法律という法律です。

一定の基準を満たした建物を「長期優良住宅」と認定し、取得者に対して様々なメリットを与えることで一般的普及を図った制度となっています。

長期優良住宅を取得すると、①税金、②金利、③資産価値という3つの観点からメリットが生じます。
次の項目から、具体的なメリットの内容を見てみましょう。

 

【メリット①】税制の優遇が受けられる

長期優良住宅に適用される税制優遇には以下のものがあげられます。

税制面でのメリット
・登録免許税の税率
・不動産取得税の基礎控除
・住宅ローン減税の上限額拡充
・新築時の固定資産税軽減期間の延長

登録免許税(登記費用)の税率軽減

登録免許税は、建物の登記申請時に必要となる税金です。

基本的には司法書士に支払う間接税の扱いですが、登記する建物が長期優良住宅に該当していれば税率の軽減が適用され、結果的に登記費用が安くなる効果があります。

まず、一般的な建物の保存登記を行うときにかかる不動産取得の税率は0.15%(令和4年3月31日迄)です。

仮に評価額(固定資産税評価額)が1,000万円の建物の保存登記を行う場合は、1,000万円×0.15%の15,000円が登録免許税の納税額となります。

一方で建物が長期優良住宅であれば登録免許税の税率は0.1%となり、同じく評価額1,000万円の建物を保存登記する場合であれば1,000万円×0.1%で税額は1,0000円となります。

一般住宅 長期優良住宅
所有権保存登記 0.15% 0.1%
所有権移転登記 0.30% 0.2%

不動産取得税の基礎控除拡充

不動産取得税は、不動産を取得者に課税義務が生じる税金です。

建物部分の不動産取得税には基礎控除枠が設けられており、一般的な住宅の場合は評価額が1,200万円以下なら課税がかからない仕組みとなっています。

一方で建物が長期優良住宅に該当する場合は、基礎控除額が1,300万円まで拡充されます。

住宅用建物の不動産取得税率は3%(令和6年3月31日迄)となっています。
基礎控除額よりも評価が大きい建物を取得するのであれば、3万円は登録免許税が安くなることになります。

【例】評価額1,400万円の建物を取得したケースの不動産取得税(土地は除く)

種別 控除枠 税計算
一般住宅 1,200万円 (評価額1,400万円-基礎控除1,200万円)=200万円

200万円×3%=6万円

長期優良住宅 1,300万円 (評価額1,400万円-基礎控除1,300万円=100万円

100万円×3%=3万円

住宅ローン控除の枠が増える

これからマイホームを購入するという人は、一般住宅の場合は最長13年間、住宅ローンの残高の最大0.7%が所得税・住民税から控除されます。

ローン残高の上限額は3,000万円という制限がありますので、平均すると毎年21万円の還付が受けられることとなり、13年間の総額は最大で273万円です。

一方、長期優良住宅の場合はローン残高の上限額は5,000万円となり、13年間の控除の合計額は455万円まで拡大します

ローン控除額は支払っている所得税の額によっても左右されるので、結果的に年収階級によってもメリットは変わってきますが、最大限控除枠を活用できる人であれば182万円お得に住宅を取得できることとなります。

新築時の固定資産税減額の期間延長

一定の条件を満たす新築住宅の固定資産税は、取得から3年間(分譲マンションは5年間)は税額から2分の1の金額が減額されます。

仮に年間10万円の固定資産税なら一定期間5万円まで減額されるということですので、新築取得者にとってはうれしい制度です。

この減額期間ですが、建物が長期優良住宅に該当する場合は2年間の延長が適用されるというメリットがあります。

一般住宅であれば5年間、分譲マンション等なら7年間は固定資産税が半額になるということを覚えておきましょう。

■建物部分の固定資産税の減額期間(令和4年3月31日迄の新築)

戸建て住宅 分譲マンション等
一般住宅 3年間 5年間
長期優良住宅 5年間 7年間

※分譲マンションは3階建て以上の耐火・準耐火建築物のもの
※床面積120㎡(1戸あたり)まで

 

【メリット②】住宅ローンの融資条件緩和

購入する住宅が長期優良住宅であれば、住宅ローンの融資条件がやさしくなるというメリットもあります。

金利優遇

まずは金利条件を比較しみてみましょう。
住宅金融支援機構のフラット35を利用して長期優良住宅を購入する場合、一般のフラット35よりも金利が低い「フラット35S」が使えるようになります。

フラット35Sを使うと、最大10年間は通常金利から0.25%の引下げが適用されます

通常のフラット35の最頻金利1.30%(2022年1月時点)から0.25%の引下げが適用されると、10年間は1.05%の適用金利となります。

率にすると0.25%は僅差に感じるかもしれませんが、4,000万円を35年で借入れした場合の総返済額の差は実に96万円ほどになります。

 

フラット35だけでなく、地方銀行やメガバンクの住宅ローン商品でも長期優良住宅向けの優遇金利が用意されていることがあります。気になった方は銀行の窓口に確認してみましょう。

借入期間が長くなる

住宅ローンを利用する際、借入期間が長いほど毎月の返済を安くすることができます。
一般的に35~40年で借り入れるケースが多いですが、長期優良住宅の場合は金融機関によって最大50年まで融資可能な場合があります。

住宅金融支援機構においても「フラット50」という最大50年の長期間のローン商品がありますが、融資対象物件の条件に「長期優良住宅であること」が明記されています。

親子リレー方式で住宅を購入する人などは一考の余地があるのではないでしょうか。

 

【メリット③】資産価値が落ちにくい

ここまで金利・融資の面でメリットのお話をしてきましたが、建物を長く使えることの最大のメリットは「資産価値が落ちづらい」ということです。

将来売却するときに有利になるだけでなく、「生涯自分が住み続ける家」「子供の代に残せる家」としての価値が高いというのも、長期優良住宅の本質的なメリットです。

この点については後ほど詳しくお話します。

 

長期優良住宅のデメリット

長期優良住宅にさまざまなメリットがあるということが分かったと思います。。
しかし恩恵がある一方で、一般的な住宅よりもコストがかかるというデメリットもあります。

認定を受けるための申請費用がかかる

建物が長期優良住宅であることを認定してもらうためは、所定の手続きを行う必要があります。
申請等の手続きに約5~10万円ほどの費用がかかります。

一般住宅よりも建築費が高くなる

これと併せて、基準に適合するために導入必須の設備や施工費などの建築コストも考慮する必要があります。
一般的には、通常の住宅よりも約1.1~1.2倍ほど取得費用が高くなると言われています。

建物を長く使うための管理コストがかかる

また、取得後も定期的なメンテナンス費用がかかりますので、長期優良住宅を取得するときはメリットとコスト面のデメリットを比較するということが大切なポイントになります。

 

実際のケースをもとに比較してみた

ここまでのメリット・デメリットを数字で比較してみましょう。
自己所有の土地に住宅を建築する場合、一般住宅と長期優良住宅の差は下記のようになります。

(一般住宅の建築費5,000万円、評価額2,500万円で試算)

一般住宅の場合 長期優良住宅の場合 差額
住宅取得費 5,000万円 5,500万円 500万円増
申請費用 0円 10万円 10万円増
登録免許税 3.75万円 2.5万円 1.25万円 得
固定資産税 減額累計 52.5万円(3年間) 87.5万円(5年間) 35万円 得
不動産取得税 39万円 36万円 3万円 得
住宅ローン控除(13年間) 455万円 273万円 182万円 得
銀行金利(フラット35) 1.30% 1.05%(10年間) 0.25% 得
ローン総返済額 6,106万円 6,226万円 120万円 得

この表をみて「あれ?」と思った人も多いはずです。

長期優良住宅の取得費を一般住宅と比べると約10%増(+510万円)となっているのに対して、金額的なメリットの総額は約340万円となっています。

このように見るとメリットはそこまで大きくなく、むしろマイナスとなったと感じたのではないでしょうか。

実は取得コストだけを見ると、長期優良住宅だからといって大きなメリットがあるというわけではありません。

先ほど説明したように、長期優良住宅の一番のメリットは「長く住める=資産価値が落ちにくい家」を取得できるということに他なりません。

一般的な住宅は30~40年経過すると建物はほぼ無価値となり、売却しづらくなります。

しかし長期優良住宅であれば需要がある限り、建物価値は長期的に持続します。

このことは、住宅金融支援機構が50年の融資を出している(=50年後の担保力を認めている)ことからも分かります。

そのような品質の高い優良住宅を比較的割安で取得するため、あらゆる優遇制度が用意されていると考えることができます。

長期優良住宅は「安いからメリットがある」のではなく、「一般住宅と同程度のコストで高品質の住宅が手に入る」という点にメリットがあると言えるのではないでしょうか。

建物を長期的に活用できる長期優良住宅、住宅購入の際の選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。

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