土地の金額ってどうやって決まるんですか?
土地には「定価」というものがありません。
基本的には売主と買主が納得した金額が土地の価格になります。
そうなの?
でもお互いが納得する金額を決めるのは大変そう…
そうなんです。
だから客観的な評価をベースに取引することが重要になります。
土地の売買価格を決めるとき、「客観的に評価されたデータ」があれば交渉がしやすくなります。
今回の記事では土地の評価についてわかりやすく解説していきます。
・土地の評価にどのようなものがあるのかが分かる。
・土地の価格の分析の考え方がイメージできる。
土地の価格交渉では客観的な評価が重要になる
冒頭でもお話したように、土地の価格を決めるのは売主と買主です。
しかし、土地を売却する人はできるだけ高く売りたいと考え、逆に購入する人はできるだけ安く売りたいと考えるものです。
普通に考えて相反する当事者がお互い納得する金額を決めるのは難しいことだとわかると思います。
そこで重要になるのが「客観的なデータをもとに、おおよその価格帯を両者が把握する」ということです。
たとえば土地の売主がこのように価格を提示してきたらどうでしょうか。
このエリアは人気だから1000万円が妥当だよ。
これだけだとあまり信憑性を感じられないですよね。
しかし次のような提示だとどうでしょうか。
近隣のA地の路線価とこちらの土地の路線価の乖離率は10%。
さらにA地は1年前に900万円で売買されているから、乖離10%ということを考えると1000万円くらいが妥当じゃないかな。
このように客観的なデータを根拠に提示されると、信憑性が高くなりますね。
実際の取引の場で売主と買主がここまで専門的な話をすることはあまりないですが、当事者が基本的な評価の仕方について把握していれば交渉がスムーズになるということを意識しておきましょう。
客観的な土地の評価はこの4つ
売買のときに参考になる土地の評価として、以下の4つがあります。
土地の評価 | 内容 |
実勢価格 | 実際の取引市場で売買されている価格 |
公示価格 | 国土交通省が評価する土地の価格 |
路線価 | 国税庁が発表する土地の評価 |
固定資産税評価 | 固定資産税の税額を計算するために市町村が評価 |
それぞれどのようなものなのか説明していきます。
①実勢価格
実勢価格は、実際の取引市場で売買されている価格のことをいいます。
土地の査定を行う上ではもっとも参考になるデータだと言えます。
実勢価格を分析する上では、①過去に行われた売買の価格(取引事例)と、②今売りに出ている物件価格(売り情報)の2つを見ることが重要です。
②地価公示価格
地価公示価格は、国土交通省が評価する土地の価格のことをいいます。
全国から選定された約30000ヵ所の土地(標準地)の公示価格が毎年3月中旬頃に発表されます。
地価公示は「国土交通省が考える適正価格」というものですが、額面の通りに売買しなければならないというわけではありません。
あくまで客観的な参考値であり、地価公示よりも実勢価格の方が高くなることもあれば安くなることも有り得ます。
一般的には不動産取引が活発なエリアほど地価公示と実勢価格の差が大きくなると言われています。(乖離率)
③路線価
路線価は国税庁が発表する土地の評価で、1年に1回更新されます。主に相続税や贈与税を算出する際に用いられます。
上のイラストのように道路ごとに路線価の平米単価が設定されており、対象土地がどの道路に接しているかによって路線価の平米単価を調べることができます。
路線価は、地価公示価格の80~90%くらいになると言われています。
(※路線価は国税庁ホームページで調べることができます。)
④固定資産税評価
固定資産税評価は、固定資産税の税額を計算するために市町村が評価するものです。
だいたい路線価の80~90%くらいになると言われています。
実勢価格からかけ離れていることが多く、査定をする上では4つの評価の中で一番参考にしづらいかもしれません。
客観的評価を用いた土地価格の考え方
土地の評価には「実勢価格」「地価公示価格」「路線価」「固定資産税評価」の4つの目線があるということがわかりました。
これらを用いて土地の売買価格を査定する方法を具体的に考えてみましょう。
取引事例などのデータを集める
不動産の価値を調べる方法として最もオーソドックスなのが近隣の取引事例を参考に価格を査定するという方法です。
これを「取引事例比較法」といいます。
取引事例比較法を用いるときは、調べたい土地の近隣のデータをできるだけ多く収集するようにしましょう。
なるべく該当地に条件が近い土地を参考にするというのがポイントです。
・なるべく条件が近い物件(面積、用途、方位、間口、地勢など)を参考にする
・古すぎる情報は参考にならないこともある
・比較するときは、平米単価や坪単価を参考にする
A土地 | 二方面道路でメインストリートにも面しており、面積も大きい | (可能用途:店舗・オフィス・アパート・マンションなど) | ||||||
調査地 | メインの道路には面しておらず、面積は小さい | (可能用途:住宅・小規模なアパート等) |
上のイメージ図を例に、“調査地”と“A土地”を比較してみましょう。
A土地はメインストリートに接しており、なおかつ反対側の道路にも接する「二方向道路」の敷地になっています。
また面積も大きめで、マンションなどの共同住宅をはじめ、店舗やオフィスビルといった事業利用など幅広い用途に適してそうです。
それに対して調査地の方はメインストリートよりも一歩奥に入った位置にあります。
そのうえ道路は一方向しか接しておらず、面積もやや小さめです。
このことから、A敷地に比べると住宅用途に限られるように見えます。
上記の条件を考えると、A土地よりも調査地の方が金額(平米単価)が安くなると思われます。
このように2つの土地が近隣同士にあっても条件が異なると平米単価に差が生じることがあります。
取引事例比較法をベースに価格を推定するときは、対象地の条件の差を補正していくという考え方が必要です。
公的評価から取引価格を逆算する
路線価は「地価公示価格(国土交通省)」の80%くらいになることが多く、そしてその地価公示は実勢価格の80~90%くらいになると言われています。
この相関性を用いて逆算すると、「取引価格=路線価×1.4~1.5倍前後」が取引の相場ということになります。
ただし、この計算はそこまであてにならないことがあります。
なぜなら取引相場は常に動いており、先ほど説明した「地価公示=実勢価格×80~90%」という公式が当てはまらないことが多々あるからなのです。
一般的には取引が活発に行われている地域ほど地価公示と実勢価格のギャップが大きくなる傾向があります。
例えば地価公示が30万円/㎡となっている地域だと実勢価格は33~37万円/㎡が妥当な金額ということになりますが、取引の活発さ加減によっては40万円…50万円となることも、逆に30万円を下回ることもあり得ます。
「取引価格=路線価×0.8~0.9」という公式は、「地価公示価格が取引相場×80%~90%」であることを前提にした目安なので、全ての地域に当てはまるものではないということに気を付けなければなりません。
乖離率から取引価格を逆算にする
取引価格と路線価にどれくらいの差があるのかという点に着目することで、より具体的な価格を算出することができるケースがあります。
下のケースで考えてみましょう。
A敷地は平米単価30万円での取引事例がありますが、前面道路の路線価を調べたところ平米あたり20万円という評価でした。
つまり実勢価格と路線価におよそ150%の開き(乖離)があることが分かります。
一方で調査地の土地の路線価は平米あたり15万円という評価となっています。
A敷地と同じように路線価と実勢価格の乖離率が150%であると仮定すると、調査地の資産価値はおよそ22.5万円という計算になります。
ざっくり言うとこのような計算になります。
路線価と取引価格の差(=乖離率)は地域によって傾向が出ます。
その乖離率を用いて逆算することでより実態に近い価格を算出することができるという考え方です。
複数の取引事例があるときは、それぞれの乖離率データを出してみる
複数の取引事例データがある場合は、先ほどの計算のように各物件の乖離率を算出してみることで全体の傾向を知ることができます。
上のイメージ図においては、各事例の実勢価格と路線価の乖離率が140~150%となっています。
これを調査地の路線価(15万円/㎡)に当てはめると、平米単価21~22.5万円という価格が算出できます。
路線価が実施されていない地域は?
郊外などの地域では、国税庁が路線価の調査を行っていないこともあります。
路線価がない場合は固定資産税評価でも代用可能です。
通常、市町村が固定資産税を算出するために「固定資産税路線価」というものを策定しています。
国税庁の路線価のように道路ごとの平米単価が設定されており、市町村役場の担当課にて確認することができます。
公的評価は客観的数字として参考にしましょう
資産価値というものは供給と需要によっても大きく変わりますので、正確な実勢価格は市場に出て初めて分かると言えます。今回の記事で紹介したように路線価などで資産価値を推定する方法は、あくまで客観的数字として参考にするようにしましょう。
より実態相場に近い価値を知りたいというときは、不動産会社で査定をしてもらうというのも有効な手段です。
どこの会社も査定自体は無料で行えますし、希望価格に満たない場合は土地情報が市場に流れることもありませんのでお勧めです。
不動産業者で査定をする場合は、一括査定サイトで複数の会社の見解をまとめるという方法も有効です。
また、不動産業者に売却の相談をする際は良い会社を選ぶことも大切なポイントです。
こちらで業者の選び方について解説していますのでよければ併せて読んでみてください。
参考記事:【不動産会社の選び方講座①】良い不動産会社の見分け方について
資産価値を調べるときは、多方面からの情報収集を心がけましょう。
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