
最近SDGsという言葉をよく耳にしますが不動産投資にも関係ありますか?

SDGsは、社会課題を解決するための世界共通の目標です。
不動産投資の分野とは一見関係ないように思えますが、今後はSDGsを意識した投資手法が重要になるかもしれません。
昨今、「SDGs(エスディージーズ)」という言葉を耳にすることが増えたと思います。
多くの企業で経営課題の一つにSDGs項目を掲げるということが一般的になり、各方面で社会課題に向けた取り組みを目にすることが多くなりました。
不動産投資を行う上ではSDGsについてどのように考えるべきでしょうか。
今回は「SDGs」と「不動産投資」の関わりについて考えてみたいと思います。
そもそもSDGsとは何か
SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称で、日本語訳すると持続可能な開発目標という意味になります。
社会全体が共通して抱いている諸問題を明確化し、それらを解決するために世界共通の目標として掲げたものを総称して「SDGs」と呼んでいます。
SDGsでは経済・環境・社会などの観点から17個の目標を掲げており、世界中の国家、地方、企業などがその目標達成に向けてあらゆる取り組みを行っています。
SDGsで掲げる17個の目標とは?
具体的にSDGsで掲げられている17個の目標をあらためて確認してみましょう。
①貧困をなくそう |
②飢餓をゼロに |
③すべての人に健康と福祉を |
④質の高い教育をみんなに |
⑤ジェンダー平等を実現しよう |
⑥安全な水とトイレを世界中に |
⑦エネルギーをみんなに そしてクリーンに |
⑧働きがいも経済成長も |
⑨産業と技術革新の基盤をつくろう |
⑩人や国の不平等をなくそう |
⑪住み続けられるまちづくりを |
⑫つくる責任 つかう責任 |
⑬気候変動に具体的な対策を |
⑭海の豊かさを守ろう |
⑮陸の豊かさも守ろう |
⑯平和と公正をすべての人に |
⑰パートナーシップで目標を達成しよう |
自然・環境保全に関する項目をはじめ、社会から貧困をなくすための項目、すべての人が生きやすい社会を実現するための平等・公平を掲げる項目など、SDGsで掲げられる社会課題は多岐にわたっているということが分かると思います。
これら17の目標を達成するため、各分野において様々な取り組みが行われています。
興味のある方は外務省の特設ページをご覧ください。
「投資」と「SDGs」の密接な関係性(ESG投資)
SDGsと非常に関連の深い言葉としてESG(イーエスジー)というものがあります。
投資の分野においては今後「ESG投資」というものが重要なキーワードの一つになると考えられますので、その意味を改めて確認しておきましょう。
ESG投資のはじまり
SDGsは2000年代からその必要性が唱えられていたものの、当初は賛同する国家が現在よりも少なかったため、実現に至るまでに時間がかかっていました。
そのような中で、国際連合事務総長のコフィ・アナン氏(当時)は「民間(企業や投資家)が協力することが社会問題の解決に繋がるのでは?」ということを考えました。
大きな資本が動くビジネスの場において社会問題解決に向けた取り組みを行うことで、加盟諸国の抱える財政的な問題をカバーしようとしたのです。
そのときに提唱された考え方が「ESG(Enviroment Social Governance)」です。
ESGでは、①環境、②社会、③ガバナンスという3つの配慮を企業が主体的に行うことの重要性が謳われました。
ESGの取り組みを行っている企業を社会が評価することでその企業へ資金が集まるようにし、またESG企業に投資することで投資家側にも安定的なリターンが得られるというメリットが生まれます。
ESGはいわばビジネスの観点から社会課題を解決する仕組みであり、そのゴールにSDGsがあるということです。
「ESG企業」に求められること(企業目線)
ESGにおいて企業が配慮すべき「環境」「社会」「ガバナンス」の内容を詳しく見てみましょう。
①環境
気候変動や環境問題への対策にどれくらい貢献しているか
②社会
雇用機会の適正や、男女平等への取り組みを実践しているか
③ガバナンス
情報開示の透明性や法令順守(コンプライアンス)が徹底されているか
ESG分野においては上記3つの観点から企業を分析し、評価を行います。
ただしESGの評価基準は明確に定まっているわけではありません。ESG企業の価値を判断する指標として、SDGsの項目が用いられています。
「ESG投資」における基本的な考え方(投資家目線)
投資家側は、ESG投資を行う上ではどのようなことを考えなければならないのでしょうか。
具体的なESG投資の手法には以下のものがあります。
■ネガティブスクリーニング
特定の業界を投資対象から除外するという考え方。たとえば武器や原子力分野、ギャンブル、たばこ、アルコールなど、SDGsの観点にそぐわない産業への投資があげられます。
■国際規模スクリーニング
環境や社会問題に関する国際的な規範について一定のレベルに達していない企業への投資を除外するという考えです。
■ポジティブスクリーニング
前の2項目に対して、ESGへの高水準な取り組みを行っている企業へ積極的に投資を行うという手法です。
■サスティナビリティ・テーマ投資
特定のテーマに対して積極的な取り組みを行っている企業へ投資を行うという考え方です。具体的には「水ファンド」「再生エネルギーファンド」「エコファンド」などがあげられます。
■インパクト・コミュニティ投資
社会、環境、コミュニティなどに対するインパクトが大きい活動を行う企業に対して行われる投資のことをいいます。
■ESGインテグレーション
投資先を判断する際に、財務情報等だけではなく、ESGへの取り組み実績などの情報も判断材料にするという投資手法です。
■エンゲージメント
単に投資を行うだけではなく、株主や投資家として企業の取り組みに対して積極的に発言を行っていくことをいいます。
不動産投資とESGの関係
日本における不動産投資に関しても、ESG促進に向けた検討がスタートしています。
現在国土交通省が打ち出している「ESG不動産投資」の基本的な考え方は以下の通りです。
①不動産へのESG投資にあたっては、リスク・リターンの二軸のみを踏まえた投資から社会的なインパクトという第三軸目も意識した投資を行う必要がある。
②提供される情報の在り方の改善等による、市場メカニズムを通じた社会課題の実現に向けての官民の取り組みが求められる。
③国際社会のESG動向に即しつつ、我が国不動産市場の安定的かつ持続的な拡充に向けて、国内外の投資家に受け入れられる不動産投資市場を実現。
国土交通省は、不動産のESG投資が促進されるための具体的な取り組みとして、「不動産開発者の運用基準の明確化や情報共有」「不動産評価の在り方の見直し」「必要に応じて税・補助のスキームや公的融資支援」などを検討しています。
ESG不動産投資に求められる「社会的インパクト」とは
不動産のESG投資における社会的インパクトとは「物件が中長期的に生み出す価値」のことをいいます。
単に不動産取引の際の短期的な価格上昇だけではなく、長期的に継続する付加価値が評価されるポイントです。
具体的には、以下の取り組みが社会的インパクトとして評価されています。
■健康性・快適性の向上
■地域社会・経済への寄与
■災害への対応(耐震性の確保など)
■少子高齢化への対応(バリアフリーなど)
ESG不動産投資にメリットはあるのか?
現時点では、ESGの考え方が不動産投資にどのような影響を与えるのか?投資家はどのようなメリットがあるのか?という点については聊か抽象的な印象があると思います。
もしかしたら投資家側に具体的なメリットが感じられないということで社会的な関心が十分に集まっていない状況なのかもしれません。
しかしESG投資は「個人が社会全体の利益を考える」という点に大きな価値があるものだと言えます。いわば社会貢献という側面が大きいですが、社会全体が良くなることで巡り巡って社会からの恩恵を受けることへと繋がります。
不動産業界においても、長期優良住宅、災害対策建築物、バリアフリー物件など、SDGsの趣旨に適合した建造物が評価される傾向があります。
これからの時代、社会課題への意識が強まるにつれてSDGs対応物件の価値が高まっていくことを考えると、長期的安定的な資産形成ができるというメリットが期待できると言えます。
投資家目線で見るべきこと
私たち民間人ができることとしては、企業や行政がSDGsで求められる目標に対してどれほど対応できているかを長期的に見ていくことが大切です。
投資を行う上でも重要なことであり、環境への配慮、住みやすい社会づくりへの貢献などにどれくらい尽力しているのかを確認しながら投資対象を選定していく必要があるでしょう。
不動産投資においては今時点ではSDGsやESGとの関わりはそこまで深くないように見えるかもしれませんが、今後は重要なポイントの一つとなっていくと考えられます。将来的なリターンに影響していく可能性も大いにあるので、社会変動の一つの要因として把握しておくべき分野だと思います。
目標達成をかかげる企業を応援するための投資信託やファンドも多く存在するので、社会全体の今後の動きとして頭の片隅に置いておくとよいでしょう。

今回の投稿で50記事達成しました。いつも見に来ていただいている皆様、本当にありがとうございます。
これからも有益な情報発信を心がけ記事を更新していきたいと思います。
“マジメに不動産”をなにとぞ宜しくお願いします!