遊休地(利用していない所有地)の相続対策としてアパート建築が有効だと言われていますが、リスクが心配です。
どのような点に気を付ければいいのでしょうか。
遊休地にアパートを建築することで節税の効果が見込めることがありますが、大きな資金が動く投資行為ですのでリスクはついてきます。
アパート建築の節税メリットとリスクについて考えてみましょう。
土地相続対策としてのアパート建築のメリット
遊休地を所有していると税金的には不利なことが多いので、土地活用について検討している地主は多いと思います。
一口に土地活用といっても駐車場経営や事業用定期借地などさまざまな手段がある中で、なぜアパート建築を選んでいる人が多いのでしょうか。
まずはアパート建築のメリットについて考えます。
アパートを建築すると土地の固定資産税が安くなる
不動産を所有していると、毎年納税しなければならないのが固定資産税です。
固定資産税の税率は評価額×1.4%で計算されますので、納税額を累計すると約70年間で評価額と同額となります。
親・子・孫の3世代で土地の金額と同じ納税をすることになるので、相続人に税負担を承継しないようにするために、どこかのタイミングで固定資産税の対策をとっておきたいところです。
土地の固定資産税評価は、更地状態の宅地が最も高くなります。このような遊休宅地は、居住用建物が建つことで大幅に評価を下げることができます。
土地の上に居住用建物が存在していることで、最大200㎡まで評価額が1/6に軽減されるという優遇措置が受けられます。
例えば毎年12万円の固定資産税が発生する土地を所有していケースにおいて、その土地が200㎡未満であれば居住用建物を建てるだけで税額が2万円まで下がり、毎年10万円の節税効果が発生します。
建築資金の借入れにより相続資産をゼロ扱いにできる?
アパートを建築するための資金を一括で支払うというのはレアケースで、ほとんどの場合が銀行から借入れを行って建築費用を調達していると思います。
金融機関からの借入れはマイナス資産の扱いとなり、相続資産の総額を引き下げる効果があります。
たとえば不動産・現金・有価証券などのプラス資産を総額1億円ほど持っているという場合、同時に1億円の負債(借金)を相続するのであれば、プラスマイナスした0円が実際に相続する資産の合計額ということになります。
土地を新たに購入する必要がないから利回りが高い
不動産を持っていない人が新規でアパート投資を始めるためには、土地購入と建物建築(購入)の資金が必要になります。
しかし、もともと遊休地を所有しているということであれば土地購入の資金は不要です。不動産投資を始めるとき、土地を新たに購入する必要がないということは大きな強みになります。
遊休地の地主が必要な資金はアパート建物の部分だけですので、資金に対する収入の割合(利回り)は高くなります。
・借入れをすることで相続資産を減らすことができる
・資金は建築費用だけなので利回りが高い
アパート建築を考える上で必ず考えなければならないリスクについて
ここからは相続対策として投資を始めるにあたって絶対に理解しておかなければならないリスクについて紹介します。
入居率・稼働率低下のリスク
アパート投資において必ず考えなければならないのが入居率・稼働率低下のリスクです。
基本的に賃貸入居者は築浅で綺麗な物件を好みます。
建物が築浅であるうちは高い入居率が確保できる可能性が高いですが、築年数経過につれて入居率の維持は難しくなっていくのが一般的です。
築古になったとき、入居者を確保するために募集家賃を減額したり、室内のリフォームで支出が必要となることもあると思いますが、これらは利回り低下に繋がります。
アパートローンは20~30年で組むことが多いと思いますが、返済期間中にキャッシュフローが悪くなる可能性があるということ前提に長期的な計画を立てなければなりません。
補修・修繕義務によるリスク
賃貸中の物件で突発的な修繕が必要になるということもあります。
よくあるケースとしては、水回りで水漏れが起こってしまったり、配管が詰まってしまうというケースです。
給排水は生活する上で大変重要なインフラですので、問題が発生したら大家として直ちに修繕を行わなければなりません。
また、室内で雨漏りが発生するということも考えられます。雨漏りは、症状を見ただけでは原因が分からないということも多々あります。
原因特定するために雨水の侵入経路などを調査するための費用がかかってしまうということがあります。
それ以外にも、コンクリートスラブのクラック対策や、防水塗装の塗り替え、長尺シート貼り換えなど、大家が修繕しなければならない箇所は多岐にわたります。
アパート運用のキャッシュフローを考える上では、単純に収入からランニングコストを控除するだけではなく、不定期に訪れる「突発的な修繕」に対するリスクヘッジとして修繕積立金を蓄えておくことも計画の中で考えておかなければならないのです。
金利上昇によるリスク
さらに毎月返済する銀行のローンにも金利上昇のリスクがあります。昨今は超低金利時代と言われており、個人でも比較的低い金利で事業融資を受けられるという状況が続いております。
しかし今後の社会情勢などの変化によって、金利が上昇するというリスクは否定できません。
アパート投資運用中に借入金利が上がってしまっても資金ショートしないように余裕を持った計画を立てなければならないですし、やはり黒字期間中のキャッシュの蓄えというところが重要なポイントになります。
・突発的な修繕が必要になることによる支出発生のリスク
・借入金利上昇のリスク
アパート投資による相続対策を考える上で気をつけなければならないこと
アパート建築についてのメリットとリスクについて説明してきました。
これらを踏まえた上で、これから相続対策としてアパート建築を検討するというときに考えておきたいポイントをまとめてみましたので、紹介します。
アパート投資はれっきとした経営
アパートを所有して賃貸運用するというのは、会社(事業)を経営しているのと同じ状況です。
最近はサブリースや一括借り上げなどといった「丸投げ投資」をうたう投資サービスが人気を博しているようですが、どんな不動産投資にも不測の事態は起こり得ますし、業者とのネゴシエーションが必要な場面も出てきます。
意外と「アパート投資=経営」という意識を持っていない人も多いようですが、イチ事業主という立場でリスクを管理したり大きな決断をしなければならない場面が多々あるということを覚えておかなければなりません。
リスクが相続人に承継される
アパートを建築することで一定の節税効果は期待できますが、多額の借金を背負って収益を得ているわけですので、大きなリスクはつきものです。
相続対策としてアパート建築を考えるときは、資産だけではなくリスクをも相続人に承継するという事実を忘れてはなりません。
もしも相続発生時にアパートのキャッシュフローがうまく回っていない状態であれば、相続が放棄されてしまう可能性すら考えられます。
せっかく相続対策として計画した土地活用が相続人に受け継がれなければ元も子もありません。
相続対策としてアパート建築を考えるなら、家族に相談した上で長期的な計画をとっていきたいところです。
不動産賃貸事業について勉強し、「目利き」を養うことも大切
アパート投資を始めたいと考える土地所有者は多いです。しかし一方ではアパートのキャッシュフローに頭を悩ませている大家が多いというのも事実です。
建築後に後悔することがないよう、リスクについてしっかりと理解した上で計画を立てていきたいものです。
不動産投資について全く経験がないという場合は、まずは情報収集が大切です。
・目利きを養うために地域にどんな投資物件があるのかというのを調べる
世の中の成功事例・失敗事例を知ることで投資に対する視野が広がりますし、自分の物件の価値を客観的に見れるようになります。