建物高さ制限の影響を受けやすい敷地の特徴→マンション階高に影響しているかも

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真地 リョウ太  Twitter
1989年生まれ。2012年から不動産会社で売買実務を担当。不動産相続対策の案件も実績あり。本サイトでは業務経験から得たスキルをみなさんに発信できればと思っています。宅地建物取引士・行政書士試験合格・FP2級。好きな食べ物は梨。

 

建物の高さの制限の影響を受けやすい敷地の特徴はありますか?

中高層の建物の高さを制限する規制には、絶対高さ制限のほか、主に道路斜線制限、隣地斜線制限、日影規制があります。

 

これらの規制の影響が大きいと、建物の総床面積を大きくしづらくなってしまうというデメリットが生じます。

 

分譲マンションにおいては、高さ制限を回避するために無理やり建物の高さを低くしてしまい、結果として1フロアあたりの階高が低くなってしまっていることがあります。

 

それぞれの規制内容で影響を受けやすい土地の特徴について考えてみましょう。

 

制限① 道路斜線制限

道路斜線制限イメージ図

 

道路斜線制限は、道路付近に大きな建物が立ち並ぶことを防ぎ、開放感のある街並みをつくることを目的とした規制です。

(建築物の各部分の高さ)
第五十六条 建築物の各部分の高さは、次に掲げるもの以下としなければならない。

出典:建築基準法第五十六条 | e-Gov法令検索

ざっくり言うと、上の図のように道路対岸を起点として引かれた斜線(赤い線)からはみ出さないように建物を建築しなければならないという制限です。

建物が道路境界に近いほど規制が厳しくなるという特徴があります。

 

セットバック緩和

 

道路斜線制限には“セットバック”という緩和措置があります。

建物の壁面を道路境界からセットバック(後退)させると、道路斜線も反対側へ同じ距離セットバックされるというものです。

建物の配置は道路境界と距離をとるほど有利なプランが立てられるということになります。

 

道路斜線制限が適用される用途地域

道路斜線制限は、原則としてすべての用途地域に適用されます。

斜線の勾配(角度)については、地域によって異なりますが、住居系用途地域の方が規制が厳しく、商業系・工業系については比較的規制が緩やかになっています。

 

【道路斜線の影響を受けやすい敷地の特徴】

道路斜線制限の影響を受けやすい敷地
①接している道路の幅員が狭い
②道路から見た敷地の奥行きが小さい

 

道路の幅員が狭いと、斜線の起点が敷地に近くなってしまい、結果として高さ制限の影響を受けやすくなってしまします。

また、道路から見た奥行きが小さい敷地の場合はセットバックがしづらくなってしまいますので、緩和が受けづらくなってしまうというデメリットがあります。

 

制限② 隣地斜線制限

隣地斜線制限イメージ図

 

隣地斜線制限は、隣接してる他の土地に圧迫感を与えないようにするために守らなければならない規制です。

上の図のように、境界線からの立ち上がり+斜線を超えた建物を建築することはできません。

隣地斜線にもセットバックの緩和があり、道路斜線制限と同様、建物を境界線から離すほど有利になるようになっています。

 

隣地斜線制限が適用される用途地域

隣地斜線制限は、低層住居専用地域および田園住居地域には適用がなく、それ以外の用途地域に適用されます。

 

【隣地斜線制限の影響を受けやすい敷地の特徴】

隣地斜線制限の制限を受けやすい敷地
①隣地から見た敷地の奥行きが小さい

 

建物が隣地境界線から離れているほど、隣地斜線の制限からは有利になり、大きな建物がつくりやすくなります。

反対に、隣地から見た奥行が小さいほど建物を後退させづらくなってしまい、制限が大きく影響してしまいます。

 

制限③ 日影規制

日影規制は、建物が建つことによって出来る日影の時間を規制するものです。

 

日影規制の制限内容を簡単に言うと、①敷地周辺の5mの範囲には日影が5時間以上かからいようにしなければならない制限と、②周辺5~10mの範囲は日影が3時間以上かからいようにする制限というものがあります。

たとえば上の図は朝8時から11時までの時間ごとの日影を表していますが、この3つの影が重なったところが「8時から11時までの3時間、ずっと日影になっているエリア」になります。

このエリアが10m(赤線)を越さないようにするために、建物の高さを低くしたり、隣地から離したりするなど設計上の工夫が必要になるのです

同じように、9~12時の3時間、10~13時の3時間、というように3時間以上日影になる部分を図面上でシミュレーションしていき、日影図面を作成していきます。

 

【日影の影響を受けやすい敷地の特徴】

日影規制の影響を受けやすい土地
①東西に横長い敷地(建物を南寄せに配置しづらい)

 

太陽光は南側の方面からかかります。つまり建物の影は、北側に伸びていくことになります。

日影規制の影響を受けずに高い建物を建築するためには、北側の隣地に長時間影がかからないように配慮した計画を立てなければなりません。

つまり、建物配置を考える上で、建物を南側に寄せられる敷地であるほど日影規制上は有利になります。

東西に横長い形状になっている敷地は、建物を南側に寄せにくくなってしまいますので、日影規制の影響が大きくなってしまいます。

 

高い建物が造りやすい敷地は?

ここまで、道路斜線制限・隣地斜線制限・日影規制という3つの制限内容のイメージと、制限を受けやすい土地の特徴について説明しました。

高い建物を建築するときに制限を受けやすい敷地の特徴をまとめると次のようになります。

高い建物がつくりにくい敷地
・前面道路の幅員が狭いと、道路斜線制限の影響を受けやすい。
・道路から見た敷地の奥行きが小さいと、道路斜線制限の影響を受けやすい。
・隣地から見た敷地の奥行きが小さいと、隣地斜線制限の影響を受けやすい。
・敷地が東西に横長い形状になっていると、日影規制の影響を受けやすい。

 

反対に、高い建物を造るために有利な敷地の条件は以下の通りです。

有利な敷地の条件

①前面道路の幅員が広い
②建物を隣地・道路境界から離しやすい
③建物を南側に配置できる

→高い建物がつくりやすい

上記の特徴を満たす敷地は、高い建物が建築しやすくなります。

 

制限の影響を受けやすい敷地で気を付けるべきこと

斜線制限や日影規制などの制限の影響を受けやすい敷地で気を付けるべきポイントは何でしょうか。

対象となる建物が分譲マンションである場合、制限を回避するために無理くり建物の高さを低く設計していることがあります。

建物の高さを低くすることで、天井高が低くなってしまっていたり、天井や床が二重構造でなくなったりしてしまうことに繋がります。

高さ制限の影響を受けやすい土地に建てられた分譲マンションを取引する場合は、このような影響が出ていないのかということを注視した方がいいでしょう。

対象となる土地にアパートなどの共同住宅を建築する予定がある場合、高さ制限の影響で容積率を満足に消化できず、土地代に対する収入の割合が小さくなってしまうことが考えられます。

収益物件を建築するなら、容積を有効に活用した建物の建築が重要になります。

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