投資不動産の法人化について~メリットとベストなタイミングを考える

投資不動産の法人化について~メリットとベストなタイミングを考える 不動産投資

 

 

 

 

 

不動産投資を法人名義で行うことにはどのようなメリットがあるのでしょうか?また、法人化するベストなタイミングはありますか?

投資用の不動産を法人化するといろんなメリットがありますが、一定の額よりも収益が低いと逆にデメリットとなることもあります。
不動産投資の法人化について考えてみましょう。

 

 

 

 

この記事のポイント
・不動産投資のメリット・デメリットを正確に把握する
・どのタイミングで法人化を検討するべきかを確認する

 

 

 

 

収益不動産の法人化のメリット

投資物件の収入が大きくなってきたときに多くの人が考えるのが所有権名義の法人化です。
まずは不動産投資を法人化することのメリットについて考えてみましょう。

 

 

メリット①所得に対する税金を節税できる

不動産所得(家賃収入)に対する税金
■個人の場合・・・所得税、住民税など
■法人の場合・・・法人税、法人住民税、法人事業税など

法人化の一番のメリットは、税金が安くなるという点にあります。法人名義で事業を行うことで節税効果が期待できる場合があるので、キャッシュフローが軌道にのってきたときに多くの不動産投資家が法人化を検討します。

ただし法人化によって税金が安くなるのは、収益が一定の水準を上回ったときです。一定の水準に達していない場合は、個人に対する所得税の方が安いので、法人化のタイミングとしてはベストではありません。
個人・法人で税金にどれくらい差が生じるのかは、後ほど詳しく説明します。

 

 

メリット②経費に計上できる幅が増える

法人名義にしておくことで、経費に計上できる支出項目が増えるというメリットもあります。
大前提として「不動産の維持管理にかかった支出」でなければ経費として扱うことができません。
個人名義だと計上できなかったものでも法人であれば経費扱いが可能になるというものもあり、結果として節税に繋がるという利点があります。

不動産の法人化により経費計上できるようになるもの
・定期保険や倒産防止共済
・投資運営に必要な交際費等
・自分や家族に対する人件費

 

 

赤字決算は次期繰り越しができる

不動産収益が赤字の年があったときにもメリットがあります。
原則として、個人名義であればマイナス分を翌年度に移すことはできませんが、法人名義なら損失の繰り越しが可能です。
法人の赤字繰り越しは最長10年まで認められていますので、キャッシュフローの状況によって節税に活かすことができます。

 

 

不動産法人化の注意点

不動産の法人化には、気を付けなければデメリットとなってしまう要素もあります。法人名義への変更を検討する上で注意しておくべきポイントについて解説します。

 

 

法人設立のための費用がかかる

現時点で会社を保有していない場合は、新規で法人を設立するための費用がかかります。
法人を設立するためには定款の作成・認証設立登記開業届などの手続きが必要となることを念頭においておきましょう。

法人設立のための手続項目 費用概算
定款の作成・認証(公証人役場) 約5万円
定款の収入印紙 約4万円
登録免許税(登記時) 約15万円
代行手数料 約5~10万円
その他諸経費(謄本手数料、公的書類取得など) 約1万円

 

 

利益ゼロでも一定の税金が発生する

法人には法人税をはじめとして法人事業税、法人住民税、法人地方税などの納税義務が課されています。
そのほとんどが収益に応じて納税額が決まる制度ですが、法人住民税のうち均等割の部分については一律7万円の課税義務が生じます。

つまり、法人の収益がゼロもしくは赤字となっていても7万円は必ず納税しなければならないということです。

 

 

個人向けの優遇措置が受けられない

住宅ローン控除、マイホーム売却時の3,000万円特例、相続時精算課税などのように、個人向けの税制上の優遇措置が受けられなくなるということも要注意です。
個人名義だからこそできる節税や相続対策がありますので、法人化することのメリットと比較して慎重に決める必要がありそうです。

 

 

個人・法人の税金比較(所得編)

収益不動産の法人化は、「個人で払う所得税」「法人で払う法人税」を比較した上で納税額が安くなるタイミングを狙って行うのがベストです。
それぞれの税計算を確認してみましょう。

 

 

個人名義の場合の税金

個人が不動産所得に対して支払う税金には、主に所得税住民税があります。
給与所得や雑所得などの他の所得と合算した年間所得に対して、以下の計算式にもとづいて税額が算出されます。

 

所得税

区分(課税所得額) 税率 所得税控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超~330万円 10% 97,500円
330万円超~695万円 20% 427,500円
695万円超~900万円 23% 636,000円
900万円超~1,800万円 33% 1,536,000円
1,800万円超~4,000万円 40% 2,796,000円

 

住民税(東京都の場合)

税金の区分 税額 備考
均等割 都民税 1,500円
市区町村民税 3,000円
令和5年までは復興税が加算されている
所得割 都民税 4%
市区町村民税 6%
都道府県民税と市区町村民税の合計が10%になるのが標準

※住民税については地域によってルールが異なります。ここでは東京都の例を紹介します。

 

 

法人名義の場合の税金

法人が不動産所得に対して支払う税金には、主に法人税、法人事業税、法人住民税などがあります。各項目の税額は以下のようにして算出されます。

 

法人の税額計算(東京都の場合)

区分 税率
法人税 課税所得800万円以下の部分 15%
課税所得800万円超えの部分 23.2%
法人事業税 課税所得400万円超えの部分 3.5%
課税所得400万円超え800万円以下の部分 5.3%
課税所得800万円超えの部分 7.0%
法人住民税 法人税割 法人税額 7.0%
均等割 一律 7万円
特別法人事業税 法人事業税 37%

 

※法人にかかる税金については条件によって税率等が異なることがあります。上記表は、東京23区内‐資本金1,000万円以下‐従業員50名以下‐年間所得2,500万円以下の場合のものです。

 

 

実際のケースで税額を算出してみる

不動産の年間の課税所得が500万円だったとき、個人・法人のそれぞの税額について考えてみましょう。

 

ケース①年間所得が500万円だったとき

ケース①
不動産の年間所得が500万円
個人の場合、住民税の所得控除は50万円
法人化する場合、東京23区内に事務所をおき、資本金は1,000万円以下、従業員50名以下、年間所得2,500万円以下を想定
個人の場合
所得税)500万円×20%‐42.75万円=約57.2万円
住民税)(500万円-50万円)×10%+3,500円=約45.3万円
本年度の税額=約102.5万円
法人の場合
法人税)500万円×15%=約75万円
事業税)[400万円×3.5%]+[100万円×5.3%]=約19.3万円
住民税)[75万円×7.0%]+7万円=約12.2万円
特別法人事業)19.3万円×37%=7.1万円
本年度の税額=約113.6万円
(実効税率約22.7%)

課税所得が500万円の段階では、まだ個人名義の方が納税額が安いということが分かります。

 

 

 ケース②年間所得が1,000万円だったとき

上記のケースで、不動産からの年間所得が1,000万円に増えたときの税金はどうなるのでしょうか。

個人の場合
所得税)1,000万円×33%‐153.6万円=約176.4万円
住民税)(1,000万円-50万円)×10%+3,500円=約95.3万円
本年度の税額=約271.7万円
法人の場合
法人税)[800万円×15%]+[200万円×23.2%]=約166.4万円
事業税)[400万円×3.5%]+[400万円×5.3%]+[200万円×7.0%]=約49.2万円
住民税)[166.4万円×7.0%]+7万円=約18.6万円
特別法人事業)49.2万円×37%=18.2万円
本年度の税額=約252.4万円
(実効税率約25.2%)

上記のケースにおいては、年間の課税所得が1,000万円であれば法人名義の方が納税額が安くなるということがわかります。

 

 

法人化のベストなタイミング

不動産の法人化のタイミングについて税制面から検討するのであれば、年間所得が約900~1,000万円を超えたくらいからメリットが生じる可能性が高くなります。

ただし、法人化に適した課税所得のラインを明確に算出することは難しい点があります。なぜなら税額を算出するときには課税所得の金額以外にも考慮しなければならないポイントが数多くあり、すべてのケースにおいて一概にメリットがあるとは言えない難しさがあるからです。

実際に法人化を検討するときは、ご自身の事業の規模、地域、他の収入など総合的な要素を考慮しながら判断するようにしましょう。

 

 

個人から法人に名義を変更する方法

個人が持っている不動産の名義を法人(会社)に移し替えるためには、何らかの原因が必要になります。
具体的には売買・贈与・出資という3つの方法がありますが、どの方法で移転するかによって求められる手続きの内容や効果が異なりますので注意が必要です。

 

 

売買契約を原因とした所有権移転

個人から法人へ不動産を売却したという形をとることで所有権を移転する方法です。
もっともシンプルな登記原因であり、実務的によく行われている手続きです。
売買を原因とした登記を行うのであれば、一般的な売買契約と同じように契約書を交わし、売買代金の清算を行わなければならないという点に注意しましょう。

 

 

贈与契約を原因とした所有権移転

登記原因を贈与とすることで売買代金を支払わずに個人から法人へ所有権を移転することができますが、会社側は取得した不動産の分が収益となり、翌年の納税額が増えることとなります。
また、贈与した側(個人)には利益が発生していませんが、みなし譲渡として課税がされる場合があります。
移転手続きとしては手っ取り早いですが、課税面で考えるとデメリットが大きいというのが贈与による方法です。

 

 

出資契約を原因とした所有権移転

個人から会社に対して現物出資をしたという形をとり、所有権を移転する方法です。
法人側は会社の資本を増やせるというメリットがありますが、現物出資の手続きは特殊で、不動産鑑定を経なければならないという条件があります。
不動産鑑定士に依頼する場合は数十万円の費用がかかるということを念頭に置いておかなければなりません。

 

 

所有権移転方法のメリット
・税金をかけずに済むのが売買
・手続きが簡単なのが贈与
・会社の資本金を増やせるのが出資
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