【資産価値のしくみ】建物の価格はどのようにして決まるのか?

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真地 リョウ太  Twitter
1989年生まれ。2012年から不動産会社で売買実務を担当。不動産相続対策の案件も実績あり。本サイトでは業務経験から得たスキルをみなさんに発信できればと思っています。宅地建物取引士・行政書士試験合格・FP2級。好きな食べ物は梨。

 

 

 

 

 

建物を売買するとき、価格はどのようにして決まるのでしょうか。

実は、建物の価値を正確に算出する方法はありません。

不動産が売買されるとき、取引価格は最終的には需要と供給のバランスによって決まるため、その価値は市場に左右されることになります。
しかし、一般的に用いられる評価方法を用いることで、建物価格の参考値を導き出すことはできます。
この記事では耐用年数・再調達価格を用いた価値の計算方法と、建物がマイナスに評価されるケース(建付減価)について解説します。

 

この記事のポイント
・建物の価値算出の基本的な考え方!
・建物が建っていることがマイナスになることもある!

 

 

 

「耐用年数」を用いた建物評価

耐用年数とは、その不動産を適正に使用できる期間のことです。もともとは税務上の減価償却の計算のために国税庁が定めた年数であって実際の建物の寿命(耐久年数)とは意味が異なりますが、画一的に定められた年数なので参考値として取引価格査定で用いられることも多いです。

建物の耐用年数は、構造別で年数が決められています。

建物構造別耐用年数
木造 22年
鉄骨造(厚さ3mm超~4mm) 27年
鉄骨造(厚さ4mm超) 34年
鉄筋コンクリート造 47年

 

 

建物の評価算出

耐用年数を用いた建物評価は、残存の期間をもとに価値を算出する方法をとります。
たとえば2,200万円で取得した木造の建物の10年後の価値を算出するというケースでは、次のような計算をします。

①取得費2,200万円÷耐用年数22年
=100万円(1年あたりに償却する建物価値)②22年‐10年=12年(残存期間)③100万円×12年=1,200万円

 

 

これに再調達価格という考え方が加わる

再調達価格とは
中古建物に対して、現時点で新築で同じ建物を取得するとした場合の想定費用

たとえば10年前だと2,000万円で建築できた建物が、建築費の高騰により現在は2,200万円かけなければ同じ建物が取得できないというケースがあったとします。
再調達価格は取得当時の価格よりも1.1倍に増加していますので、残耐用年数の価値×1.1倍という計算を加えるとより実態に近い価値を算出することができます。

 

 

耐用年数・再調達価格は参考値として用いる

耐用年数・再調達価格という考え方は全国共通の考え方なので価格を算出する上では客観的に分かりやすく、査定に用いられることが多いです。
しかし、ここで算出される価格はあくまで参考値です。
実際の取引価格は需要と供給のバランスによって決まりますので、残耐用年数の価値よりも高い金額で、あるいは安い金額で売買されるということも珍しくはありません。

 

中古建物の価値は、耐用年数および再調達価格から逆算して算出することができる。ただし、これが必ずしも実際の取引価格と一致するとは限らない。

 

 

 

建物の使用価値によって不動産の価格が左右されることがある

不動産取引においては、建物の使用価値が価格に影響することがあります。
たとえば取引対象となる不動産が宅地および一戸建て住宅であるとき、買主がそのまま住宅として利用することが可能な物件であれば、土地・建物の価値はありのまま評価されることになります。
このように現存している建物が土地の用途と一致している状態のことを「最有効使用」といいます。

最有効使用
不動産の価値が最大限活かされる使われ方がされている状態
→土地・建物ともに適正な評価を受けられる

 

 

最有効使用がされていない不動産


最有効使用の状態の不動産が取引の対象となるとき、土地、建物がそれぞれ適正に評価されることになります。
ところが、現存している建物が有効に利用される見込みがないという物件だと、土地・建物がマイナスの評価を受けてしまう場合があります。

 

 

建付減価という考え方

✏ケーススタディー
住宅エリアにおいて店舗用の建物が存在している。
残耐用年数から逆算すると建物には200万円の価値があり、土地は更地(何も建っていない状態)の場合だと1,000万円の価値が見込まれる。

上記のケースにおいて、単純に土地・建物の価値を合算すると不動産の価格は1,200万円ということになります。

しかし、本物件が住宅エリアということもあって店舗として利用する需要が全くないと仮定すると、その不動産の価値は「現存している建物を取り壊して住宅用地として活用する」という点にあると言えます。

耐用年数上は200万円の価値が残っていたとしても、最終的には取り壊される前提で取引が行われることが明確なのであれば、残念ながら建物は物件価格に評価されません。
むしろ建物の解体費用が土地の価値から控除されるという考え方が一般的です。

このように、有効使用される見込みが低い建物が存在していることによって不動産の評価がマイナスとなってしまう考え方を「建付減価」と言います。

上記のケースで解体費用が100万円かかるのであれば、土地の更地価格1,000万円から解体費用を差し引いた900万円が取引価格のベースになります。

 

 

 

使用価値が建物の価格を決める

「土地は更地(何も建っていない土地)のときにもっとも価値が高くなる」というのは不動産市場における大原則です。建物が存在していることで、少なからず建付減価が生じる可能性があります。

しかし建物の有効利用の度合いが大きいほど、土地の価値は更地価格に近付きます。そして最有効使用の状態のとき、更地価格と建付地の価格はイコールとなります。

まだまだ価値がある建物に見えても、土地に対して有効使用ができているか否かで価値は左右され、土地の価格に影響することがあるのです。

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