相続税が払えなかったらどうなる?法改正によって課税対象者が増えています

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真地 リョウ太  Twitter
1989年生まれ。2012年から不動産会社で売買実務を担当。不動産相続対策の案件も実績あり。本サイトでは業務経験から得たスキルをみなさんに発信できればと思っています。宅地建物取引士・行政書士試験合格・FP2級。好きな食べ物は梨。

 

相続対策は大切だということをよく耳にしますが、そもそも相続税って資産をたくさん持っている人が対象となるものですよね。

 

資産をそんなに持っていない人は相続税のことを考える必要はないんじゃないですか。

たしかに相続税には大きな基礎控除の制度があり、相続資産が一定の価額を超えなければ課税対象となりません。

 

しかしこの相続税基礎控除、平成27年の税制改正され、大幅に引き下げられたことをご存知でしょうか。

 

この改正によって、これまでは相続課税対象ではなかった人もどんどん対象に含まれるようになり、多くの人が頭を悩ませています。

 

この記事では、被相続人から財産を相続したとき、相続税が払えなかったらどのような手段があるのかについて解説していきたいと思います。

 

多くの人が頭を悩ませた「基礎控除額の引き下げ」

 

まず、相続税の基礎控除について説明したいと思います。税制が改正される前の基礎控除は下記の計算式により求められました。

【改正前】相続税基礎控除
5,000万円+(1,000万円×相続人数)

例えば相続人が3名いるのであれば5,000万円+(1,000万円×3名)の8,000万円が基礎控除になります。

残された財産が8,000万円以下であれば相続税が非課税となり、8,000万円を超えたときには超過した部分に対して税率を掛けて税額を算出していました。

税制改正によって、基礎控除は次のように変わりました。

【平成27年 改正後】相続税基礎控除の計算式
3,000万円+(600万円×相続人数)

先ほどのケースのように相続人が3名いる場合、現行法の基礎控除額は4,800万円ということになります。

8,000万円→4,800万円ということでかなりの引き下げであることが分かると思います。

基礎控除引下げによって課税対象者が増えている

相続財産は現金だけではありません。不動産、宝石や骨董品、株などの有価証券、自動車、借地権・貸付債権などの権利財産なども含まれます。

「現金資産はそんなに多くは無いけど、所有している実家(土地や建物)などの資産価値を含めると基礎控除額よりも高くなってしまう」というケースが改正後とても増えているのです。

実際に統計データを見ても、平成26年までの全国の相続税課税人数は50,000人前後を推移してたのに対して、改正のあった平成27年以降にはおよそ2倍超の110,000人を越えるようになっています。

少子高齢化の背景もあり、課税対象者は今後も増えていくのではないかと予想されています。

今までの相続税は富裕層が対象となったものでしたが、今や一般的な家庭においても課税対象者となる可能性のある税制になったと言えます。

相続税は自分で算出して税務署に申告しなければならない

相続が発生したら、「○○円の税金を払ってください!」と税務署から請求が来るわけではありません。

相続税は申告制となっており、課税対象者に該当した場合は相続人が自分で税額を計算して課税手続きを行わなければならないのです。

相続税課税対象者は、亡くなった人の所有していた財産を全て正確に記録した上で納税額を自分で計算して税務署に申告しなければなりません。

その上、相続税の申告については10ヶ月以内に行わなければならないというタイムリミットもあります。

相続人は期限内に「相続財産に何があるのか」「税率は何%になるのか」「どのような優遇が受けられるのか」という事柄を1つ1つ整理していかなければならないのです。

 

生前にもらったお金も相続財産とみなされる

 

生前に贈与を受けた財産についても相続された財産とみなされ、課税価格に含まなければならないこともあります。

名義預金(他人名義の口座で管理される被相続人のお金)についても同様です。被相続人が亡くなる前に現金をもらった経緯がないか、遡って整理しなければなりません。

相続や遺贈で財産を取得した人が、被相続人の死亡前3年以内に被相続人から財産の贈与を受けている場合(一定の特例を受けた場合を除きます。)

出典:そのほか相続税がかかる財産(みなし相続財産ほか) | 国税庁HP

このような納税額の算出や申告の書面作成は、費用はかかりますが税理士に依頼して手続きを代行してもらうのがベストです。

相続財産の状況を担当税理士へ正確に報告し、申告書を作ってもらいましょう。

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申告をしなかったら大変なことになる!?

 

相続税の申告をするとき、相続財産の記録や算出は正確に行わなければなりません。

もしも申告しなかったり内容に不備がある場合はどうなってしまうのでしょうか。

忘れた頃にやってくるかもしれない「税務調査」

税務署職員は、銀行通帳の資金の移動状況をはじめ不動産登記簿など相続財産にまつわるありとあらゆる情報を閲覧する権限を持っています。

提出された相続税申告書が受理されたあとに調査が必要な案件だと判断された場合は、「税務調査」に立ち入られる場合があります。

しかも税務調査は相続人の10人に1人くらいの確率で入るとも言われており、調査が入ることは決してレアケースはありません。

一般的に税務調査は、対象財産が大きければ大きいほど対象となる可能性が高まります。

 

税務調査が来るタイミングは?

税務調査は、警察書が行う家宅捜査のようにいきなりやって来るわけではなく、立ち入りの連絡が事前に対象者にくるようになっています。

税務調査の対象となった場合、時期的には申告後の1~2年後に入ることが多いようです。

相続発生から時間が経っての調査ですので、手続き内容をすっかり忘れてしまっていることが多いと思います。必要関係書類は大事に保管するようにしましょう。

税務調査ではどんなことを調べられる?

税務調査が入ると、申告された財産と実態に相違がないか隈なくチェックされます。

亡くなった方の通帳から数十万円以上の出金履歴があるとなれば、何の用途で出金したのか?誰が受け取ったのか?などという細かい質疑がありますので、理路整然と説明するための準備が必要です。

万が一、調査の中で申告漏れや過少申告が発覚した場合は追徴課税が請求されます。

また、意図的に脱税をしようとした悪質なケースと判断された場合は刑事罰を受けることもあるので甘く考えてはいけません。

相続税の申告は間違いの無いように慎重に行い、もしも申告後に税務調査が来ても堂々と対応できるような心構えを持っておかなければなりません。

税務調査が入る可能性があるのはいつまで?

相続税の納税義務は原則として5年で消滅時効にかかります。

したがって、5年を越えると税務調査が入ることはなくなります。手続きに使用した書類は、最低5年間は残しておくようにしましょう。

 

相続税が払えないときはどうすれば良い?

 

日本の税制では、原則として相続税は期限内に一括で現金払いしなければならないということになっています。

納税資金の蓄えがあれば良いのですが、相続資産が多いと税額も高くなるため、一括で支払うのが難しいこともあると思います。

手元に納税資金がない場合はどうすれば良いのでしょうか。具体的な手段を紹介します。

相続税の課税が困難なときの措置

①延納
②物納
③任意売却(不動産)

①延納

税金を一定期間内で分割して払っていく制度です。延納期間についてはケースバイケースですが、最長で20年の分割まで認められます。

ただし延納は申し出れば誰でも認められるわけではありません。原則として納付が困難な金額が上限とされており、なぜ困難なのかを自ら説明する必要があります。

延納を申し出るためには以下の条件があります。

1⃣相続税額が10万円を超えている
2⃣
納付額(利息含む)に相当する担保を用意すること
3⃣延納申請書と担保提供に必要な書類を、期限内に提出すること

※分割で払っていくことになるので、銀行でローンを組むときのように担保提供や利息支払いが必要になります。

②物納

土地や建物などの不動産また国債などの有価証券を国に治め、課税に換えることができます。

ただし物納が認められるハードルはかなり高く、原則として延納が難しい場合に限られます。

また複数の財産がある場合は好きなもの選んで物納できるわけではありません。

物納財産の種類には優先順位が定められており、順位の高いものから物納しなければならないというルールがあります。

第1順位・・・不動産、船舶、有価証券等(非上場株式以外)
第2順位・・・非上場株式等
第3順位・・・上記以外の動産

なお、不動産を物納するときの価額は、原則として「相続税評価額」がベースになります。

一般的に相続税評価額は市場価格よりもかなり安くなってしまうことが多いので、不動産を物納すると損をしてしまうことがほとんどです。

③任意売却(不動産)

相続財産が不動産であれば、それを第三者に売却して納税資金を調達するという方法が任意売却です。

前述したように不動産を国に直接物納すると相場よりも低い金額で評価されることがほとんどです。

任意売却という方法を選べば適正価格で現金化することができるので、きちんと納税したうえで手元に資金が残ることもあります。

ただし、物件が売れるまでに時間がかかってしまうことがあるというデメリットがあります。

納税のタイムリミットまでに不動産が売れない場合の対応も想定しておく必要があります。

任意売却の注意点

相続不動産を任意売却した場合、売却益に対する譲渡所得税が発生します。また、売却するための仲介業者への報酬等も経費として必要になります。

国に物納する場合は譲渡所得税や手数料等がかかりません。

最終的に手元に残る金額や売却に要する労力などトータルで比較し、物納と任意売却のどちらにメリットがあるか判断する必要があります。

 

納税義務を放置しているとどうなるのか

 

納税を滞納した状態が続くと、財産が差し押さえられることになります。

差し押さえられた財産は、公売によって言い値(落札額)で買い叩かれることになるので、債務者にとってはデメリットしかありません。

しかも相続税は「連帯納付義務」とされているため、相続人が複数人いる中で1人でも滞納者がいれば他の相続人の取り分まで差し押さえ対象となる場合があります。

繰り返しますが、公売に出された場合はオークションのような入札方式で換金されることになるため、市場価格よりも安く買い叩かれることになります。

どうしても納税資金が準備できないというときは、早めに任意売却などを検討するようにしなければなりません。

 

まとめ:あなたも相続税の課税対象者になるかもしれない

基礎控除の引き下げにより、これまで相続税とは無縁だと思っていた多くの人が対象者に含まれることになりました。

改正によって納税の資金繰りに頭を悩ませている人が増えています。

いざ相続が発生したときに納税に慌てることがないよう、来たるべきときに備えて準備をしていくに越したことはありません。

今一度ご家庭の財産状況を確認し、相続税についてある程度シミュレーションを立てておくことが大切です。

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